「ジェンダード・イノベーションEXPO 2023」に『素敵なあの人』編集長・神下が登壇

この2〜3年で一気に沸き立ったフェムテックの一大ブームを契機に、2023年2月に東京ビッグサイトにて、多様な健康課題に着目したヘルスケア製品が集まる「ジェンダード・イノベーションEXPO 2023」が初開催されました。会期中に行われたセミナーには『素敵なあの人』編集長の神下が登壇し、「シニア」の生活者動向を発表。大変反響の高かった、リアルな60代女性市場とフェムテックの関係についての講演内容をリポートします。

EXPO内のセミナーで、「シニア」に向けたフェムテックについて編集長・神下が講演

『素敵なあの人』編集長・神下敬子

「ジェンダード・イノベーションEXPO 2023」は2023年2月8日~10日の3日間、東京ビッグサイトにて開催されました。性差を考慮したヘルスケア製品が集まるBtoB展示会で、ジェンダード・イノベーション(※)をテーマにしたEXPOとしては世界初開催となりました。

会期中は連動企画として「フェムテックブームの影響 ~男女の健康意識・行動・消費はこう変化した~」と題したセミナーも開催され、女性の健康課題の解決に向けたプロジェクトを統括するリーダーや、人気媒体の編集長など計5名が登壇しました。

弊社からは『素敵なあの人』編集長の神下敬子が登壇し、「令和の60代女性とフェムテック」をテーマに、リアルな60代の実態とその市場の魅力について講演しました。

以下、当日の講演内容について紹介します。

(※)ジェンダード・イノベーションとは、科学・技術・政策など幅広い分野において性差分析を取り込むことで新しい視点を見出し、イノベーションを創出すること。性差分析により、これまでは明らかにされてこなかった女性特有/男性特有の健康問題やニーズを捉えたソリューション開発につなげられることが期待されています。

『素敵なあの人』編集長が語る、「おばあさん」に当てはまらない令和のリアルな60代の実態

“今の60代はシニアではないので、シニア文脈の提案は響かない”

『素敵なあの人』誌面より60代の街角スナップの様子

神下編集長「60代と聞くとシニアと捉える方が多いと思うんですが、今の60代はとても若々しいんです。昨年秋に銀座や二子玉川で撮影した『素敵なあの人』の「60代の街角スナップ」特集からも分かるのですが、昔に比べて見た目にも意識的にも20歳ぐらい若い印象です。

その理由は、若者向けファッション誌の第一世代だからです。現在のアラウンド60歳は、若いころに『an・an』や『non-no』などのファッション誌が誕生し、等身大のファッションやカルチャーの情報に触れることができた最初の世代です。なので、前の世代よりも意識もファッションもずっと若くなっています。

彼女たちを従来の“おばあさん”のイメージに当てはめ、シニア向けビジュアルを見せても自分事として捉えてもらえません。実際“なかなかシニアマーケティングがうまくいかない”と弊誌にご相談に来る企業様も多くいらっしゃいます」

“60代のインサイトを知るために、編集部では定期的に「お茶会」を開催”

実際に鎌倉で開催した「お茶会」の様子

神下編集長「弊誌では読者のインサイトを捉えてシニアマーケティングを行うために、“お茶会”を定期的に開いています。実際に読者のご自宅にお邪魔してお話を聞きながら、読者層の方々がどんな情報の捉え方をしているのか、またどんな健康課題を抱えているのかをしっかり調査しています。

お茶会や誌面作りで得た知見を活かし、弊誌ではブランドの立ち上げから関わったり、いろんな企業様とのコラボレーションも行って、マーケティング活動をサポートしています」

“『素敵なあの人』で注目しているフェムテックは「尿漏れ」ケア”

60代が抱える健康課題の上位は「尿漏れ」

神下編集長「次に60代のフェムテックについてお話します。今の60代は感覚的には若々しいのですが、成人病含め体の問題は出てきます。“気になる健康問題はどういうものですか?”という読者アンケートでは、“デリケートゾーンの乾燥・かゆみ”“尿漏れ”と答えた方がそれぞれ20%近くもいらっしゃることが分かりました。

編集部が特に注目しているのが、この尿漏れ分野です。尿漏れがあると外出することがおっくうになったり、たとえばライブに行ってもトイレ問題で行動制限されることが多いそうです。60代は子育てを終えて定年を迎え、これから自分たちに残された時間はご褒美のような時間のはずなのに、QOLを下げるような問題があると楽しめないという意見があります」

“悩んでいる人が多いのになかなか使用されない尿漏れパッドやショーツ”

尿漏れパッドなどのフェムテック商品の使用率について

神下編集長「一般的には50代以上の5人に1人は尿漏れで悩んでいるといわれているなか、弊社の読者アンケートでは尿漏れパッドやショーツを使っている方は17%ほど。割合的には少ない数値です。まだまだ生理用ナプキンなどで代用している方も多いのではないでしょうか」

“介護グッズ以外の場所にも尿漏れ用アイテムを置くなど顧客視点での工夫を”

神下編集長「ドラッグストアなどでは尿漏れパッドの陳列先は介護グッズのエリアにあるという点も、大きな問題だと思います。自分たちがまだ“おばあさん”だとは思っていない彼女たちが、介護グッズの陳列棚で尿漏れパッドを買うというのは、精神的ハードルが高いんです。

たとえばデリケートゾーンケアコーナーなどでポジティブに陳列されていれば、もっと尿漏れ用アイテムが手に取ってもらえるのではないかなと感じます。尿漏れパッドを知ってもらいたいという経緯から、弊誌では過去に何度も尿漏れケアの企画を実施しており、多くの反響をいただいています。

フェムテックというと、今はどうしても“生理・妊活・更年期”が中心だと思いますが、実は閉経後の人生ってとても長いんです。女性の平均寿命が87歳ぐらいなので、50歳で閉経した場合は人生があと40年近くもあり、本来は大きな市場です。今後、“エイジドフェムテック”という年齢が上の人のためのフェムテックが、もっともっと活性化されていくと思いますし、弊誌もそのお役に立てたら幸いです」

若々しく変化する「更年期とシニアの間の60代女性たち」は、実は大きな市場規模

(左から)『素敵なあの人』2023年3月号、2023年4月号

神下編集長による講演終了後には、多くの聴講者の方が名刺交換にいらっしゃいました。反響の声も大きく「更年期とシニアの間のこの世代について、改めて考える必要があった」や「今の60代があまりに若々しくて驚いた。マーケティングを考えるうえで参考になった」などのコメントをいただきました。

60代は人口分布的にもかなり大きい市場であり、健康寿命よりも手前で体力も気力もある世代です。ただ、60代は80代以上の高齢者を含めた年代とひとくくりにされがちです。60代だけ抜き出すと全く違う実態があり、現在は若々しく変化しています。『素敵なあの人』編集部では、お茶会などを通して60代女性のインサイトを把握して誌面に反映させることで、読者から大変支持されています。

新しい60代の市場にご興味のある方は、ぜひ弊社にご相談ください。
(問)宝島社 tjad@takarajimasha.co.jp